量子力学で生命の謎を解く ジム・アルカリーリ SBクリエーティブ
なんでも科学的に理解しようと心がけているし、科学的に説明のつかないことは信じられないと思う質だ。
大方の科学理論は、論理的な説明に納得がいくから問題ないのだが、「同時に二つの場所に存在する」「粒子が壁をすり抜ける」などという量子力学理論、それに化学式をどう積み重ねてみても生まれて来ない「生命」というものが厳然として存在している不思議さに彩られる生命論については、「完全に理解できている訳ではない」というもどかしさがある。（だからこそ、おもしろいのかもしれないが）
そんな量子力学と生命論という二つの自分にとっては「摩訶不思議、不可解な理論」の二つを融合しているのが本書であり、タイトルを見ただけでもワクワクさせられる。
但し、この量子生物学という分野は、現在発展途上、いやむしろその端緒についたばかりの分野であるようで、タイトルの意気込みとは裏腹に、例えばDNAに書かれた遺伝情報がどのようにして実現するかは、量子力学の法則が関係している（らしい）、とか、鳥の渡り、魚や昆虫の帰巣本能等については「量子生物学」が上手く説明出来（そうだ）、といった類の類推が多く、量子力学の波動方程式との関連を持ち出しての説明には、中々理解しがたい部分も多く、今一つスッキリしなかった。
結局、最後まで読んでなんとなく理解できたのは、「生命」という不思議な現象は、ミクロの世界（量子力学の世界）と、日常のマクロな世界（古典力学の世界）の境界線上に存在するようだ―――というのが量子生物学の探求する世界のようである---ということのようだ。
まだ若い学問だが、今後の発展を期待したい。
(15年9月発行)