五〇億年の孤独 リー・ビリングス 早川書房
この宇宙には地球人以外の知的生命体がいるのだろうか。
そもそも、地球以外の星に生命体がいるのかどうかさえ探索という手段でそれをたしかめることには成功していない今の時点で、知的生命体の存在を議論すること自身、あまりにも空辣な論争に過ぎないようにすら思わないではないが－－－。
しかし「この広い宇宙に、我々だけが孤独に存在しているのだろうか」という疑問は、我々人類にとってはこれまでも最大の疑問であったし、これからも永久に科学探究の究極のテーマとしてありつづけるであろうと思われる。（だからこそ、「宇宙人との遭遇」とか「宇宙大戦争」といったSFは子供たちのみならず、科学者たちまでもが常に興味を示す最大級のエンターテイメントなのではないだろうか）。
本書は、この疑問に50年以上前から挑み続けた世界中の多くの科学者の研究・思考の過程をドラマチックに追ったもので、見果てぬ夢を追いかける、ある意味では「夢見る科学者」といわれそうな科学者たちを描いた、（見方によっては）メルヘンチックなドキュメント物といえる。
例えば、アメリカの天文学者フランク・ドレイクは60年代に「フランクの方程式」という我々の銀河系に我々とコンタクトできるレベルの知性を持つ生命体が存在する可能性のある惑星がいくつあるかを求める方程式を提唱し、この方程式では変数を7つ設定しているが、今のところ全銀河系ならば10〜100個の星に知的生命体がいる！という答えが出ており、全宇宙という規模で考えれば我々以外にも知的生命体が「溢れている〜」という答えになってしまうが---。
その一方では、それではなぜ我々はまだ自分達以外の知的生命体とコンタクトがとれていないし、その痕跡さえ見つけられないのか？といういわゆる「フェルミのパラドックス」にどう答えるべきなのか―――の回答も得られていないこととの矛盾をどう解決すべきなのか―――。
宇宙には我々以外の知的生命体（いや単純な生命体にしても）がいるのかいないのかという問題は、やはり我々人類にとって最大級の「知的エンターテイメント」のままでありつづけるのだろうか―――。
ちなみに太陽圏を脱出し、今、太陽系から4.7光年先にある恒星系ケンタウルス座α星に向かっているボイジャー1号がα星に到達するのは今から8万年後である。ケンタウルス座にもし知的生命体のいる惑星があったとしてもそれをボイジャーが探り、その結果を我々人類（まだ生きていたとして）が知るのは8万年後ということになる訳だが――――。
（16年3月発行）