広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由 S・ウェッブ 青土社
この広大な宇宙に我々以外の知的生命体はいるのだろうか。宇宙物理学者でなくても誰もがその答えを知りたがっている。
最近の研究というか宇宙論（いやその他の学問分野―――例えば宇宙生物学等―――でも）の推論では「この宇宙は無限というほど広い。少なくとも我々が知る限りこの宇宙には一種類は知的生命体―――我々人類が――がいるのだから、そんなに広い宇宙であるならば、そのどこかには知的生命体はいる確率は高い----いや、高いどころか、むしろ宇宙には知的生命体があふれるほどいるに違いない！」ということが当然の如くに語られている。
しかし―――そんなに溢れるほどの知的生命体がいるのならなぜ、我々はまだその溢れるほどいる知的生命体のたった一つにすら遭遇していないのだろうか―――？ これが、世にいう「フェルミ・パラドックス」である。
この宇宙論、いや天体物理学，数学，細胞生物学，進化論，宇宙地質学における最大の謎であり、SFの最大のテーマとなっているこのパラドックスに様々な観点からアプローチしたのが本書だが、その理由たるやタイトルにある50では、まだまだ足りない！といわんばかりの面白く、興味深い理由が述べられており、宇宙論の醍醐味を教えてくれる快著である。
50の理由それぞれが独立しているのでそれぞれの章をピックアップして読んでいってもよいし、さまざまな楽しみ方ができるが、要は「どれだけ宇宙が広いか」の捉え方によってこのパラドックスはどうにでも説明がつくということでもあるというのが全体の結論になっているが、「いるだろうが、いなかろうが、この宇宙は広すぎるし、宇宙の時間の（少なくともビッグバンからにしてもたった！138億年－－－これからの未来が一兆年もあるとすれば－－－）この瞬間、この特定の場所――――太陽系内にせよ、地球上にせよ―――で両者が遭遇する可能性はほとんどゼロに近いに違いないという思いが強くなった。
もちろん、それでもそのことを証明する術はないわけで―――いわゆる悪魔の証明が不可能であるように―――このフェルミ・パラドックスはおそらく、永遠に続くのだろう。
（04年7月発行）