永遠とは違う一日 押切もえ 新潮社
千葉ロッテのエース涌井との交際がスポーツ紙に載っていたが年齢が36歳となっていたので（涌井は確か29歳）ちょっと驚いた。というのも、そんなに目立った存在とはいえないまでも割とテレビなどで現役モデルとして見かける人で、まだ20代位のイメージがあったからだ。
モデル出身とはいうものの容姿だけではなくバラエティーなどでは気の利いたコメントなどで重宝がられているからこそテレビなどでも活躍できているのだろうが、この人にこんな小説を書く能力があったとは―――更なる驚きである。（もっとも、水嶋ヒロのように、名前だけで作品は出版社が書いていた―――なんていう可能性だって疑い出せばキリがないけれど）
芸能界という少し特殊な世界で働いている女性だからこそ書けるといった感じの女性達を主人公にした短編6編からなった一冊だ。
アイドルグループから脱落を余儀なくされた高校生、アイドルの追いかけで上京したものの、わがままな女性タレントの担当をさせられているマネージャー、ダメンズとの腐れ縁に悩むスタイリスト、離婚した女流画家等々といった、確かに素材になっている人物が作者の身の廻りにいそうではあるが、一般にはあまりなじみのない人種である、というところにこの短編集の人気の秘密もありそうだ。
それぞれの女性たちが希望と焦りをもち、それぞれの夢や挫折を味わっている様には、そんな健気な女性達の代表として押切もえがいるかのように錯覚し、なんだか好感をもってしまうが－－－。
本作を読み終わった時点では、作者の次回作が楽しみではあるが－－－次回作こそ本物の才能が試される時かもしれない。
（16年2月発行）