「イスラーム国」の45のキーワード 中東調査会 明石書店
今までテロとは余り関係がなさそうに思えていたカナダや東南アジア各地において必ずしも計画的とは思えないけれど「イスラーム国」を名乗る単独犯、あるいは少数グループによるテロが突発的に起こっている。
こうなってくると、海外に観光などで出かける際ばかりではなく、2020年にオリンピックを控えている日本国内においてさえ、ひょっとしたらイスラーム国シンパなどによるテロの可能性がないとは言えない―――といった気分にもなってくる。
中東の情勢は日本でも日々伝えられてはいるし、テロの脅威にさらされている欧米などの各国政府筋、あるいは海外の通信社からの情報も豊富だが、日本におけるこれらに関する情報のほとんどが、そういった外部機関からの情報の引用、孫引きに過ぎないという点では、日本における将来リスクを計る基準としてはものたりない。
そういう意味では――――世界的なレベルと比べてその情報が同等の価値のあるものなのかどうかは分からないけれど―――本書の発行者である、外務省の外郭団体である中東調査会による情報は、もっとも信頼がおける「日本人向け」のものではないかと思う。
そもそも、イスラーム国とはどんな組織なのか、どんな教義からあの「斬首」などという残酷なことを「神の名に於いて」おこなえるのか―――といった疑問を45の項目に纏めて解説しており、ある程度聞きかじってきた「イスラーム国」に関する知識のおさらいにはなる。
外務省外郭団体だけに、ジャーナリスティックな推測や憶測的な情報は極力排除されており、彼等の日常的な生活様式や行動様式といったものを、まさに「スパイ」してきたかのように描かれている点も信頼感がもてる。
（15年7月発行）