ソクラテスに聞いてみた 藤田大雪 日本実業出版社
2400年前、ギリシアのアテナイの街のアゴラ（広場）で若者達と哲学論争を繰り広げていたというソクラテスが現代の日本に現れ27歳、彼女ナシ、まだ自分が何者であるかを知らない現代の若者とアテナイの若者とやっていたと同じ哲学論争を繰り広げる---というユニークな一冊だ。
ソクラテスといえば人類史上最初に「考えること」の重要性を説いた古代ギリシアの哲学者だがその特徴的な論法は、対話によって相手の飾られた「偽の心理」を浮かび上がらせ、その矛盾点をつくことで相手の今まで表には出て来なかった深層心理、すなわち自然の摂理を浮かび上がらせるというものだった。
本書でもソクラテスがこの27才の青年サトル君から引き出すのは、サトル君自身が気付いていなかった彼自身のあるべき本来の姿であり、そういった対話を通じてかの有名なソクラテス哲学の真髄ともいえる「汝自身を知れ」「無知の知」「善く生きろ」の意味を教えようという、いわば「ソクラテス哲学入門」書である。
仕事、人間関係、お金、恋愛、結婚……分かっているつもりで実は全く分かっていない27才位の若者（いや、もっと年上であっても分かっていない人は多いと思うが）にとっては「目から鱗」のように思える一冊かもしれない。
（16年3月発行）