地球史を読み解く 丸山茂徳 放送大学
著者が18年前に著した「生命と地球の歴史」は、今も時々参照することもある自分にとっての名著であるが、その後、折に触れ著者の地球史に関する講義などに触れることもあり非常に気になる地球物理学者であったが、その著者が今年「放送大学」において「地球史を読み解く」という講座をもつことになり毎回ではないものの幾度かその講義を聴いたことがあったが、本書はその放送大学講座の教科書である。
教科書だけに一般の読み物と違っていささか取っつき難いところもあるけれど、何しろ宇宙創成から始まり地球の誕生過程、そして火の玉であった地球が徐々に冷却し水の惑星となりさらには生命を持つに至った奇跡といってよいダイナミクス、そしてカンブリア紀の生命爆発から今日の我々が誕生してきた歴史、更には惑星としての地球の未来（もちろん、我々人類を含む生命の未来）までを網羅的にしかも大胆に描いていくその明快さは、ある意味痛快ともいえるものであり、とっつき難い「教科書」ではあるものの何度でも読み返したくなる魅力に溢れている。
地球の内部構造、そして地球規模で進む水の地球内部への取りこみとその循環、といった問題だけでも、サラリと書かれてはいるもののいずれも初耳の物ばかりで、なにしろグイグイと引き込まれる「教科書」である。
（16年3月発行）