右脳と左脳を見つけた男 M・S・ガザニガ 青土社
著者マイケル・ガザニガは現在76歳。今や我々の右脳と左脳がそれぞれに役割をもっていることを常識として知られているが、そのいわゆる「常識」となった分離能の研究の第一人者という意味では我々に極めて馴染のある（はずの）学者ということになる。
そんな大脳学者である彼が、自らの研究者人生をプライベートな信条などまでもに詳しく触れながらかつ自らの業績とそれらの業績を得るに至った経緯などを語ったいわゆる「私の履歴書」が本書である。
本書からは、科学研究というものが、多くの学者、若手研究者たちの個々の努力の積み重ねによって行われるものであることがよく理解できる一方、一つの大きな記念塔的科学業績を得るためには個々の地道な研究の積み重ねだけでは無理であり、そこには壮大な一つのプロジェクトともいうべき目標に研究者たちの集団を向かわせるための枠組み作り、あるいはそういった目的に向かうためのリーダーシップというものが絶対的に必要であることも本書でよくわかる。
認知神経科学と言われる分野における、いわゆる、研究コーディネーターとしてのガザニカの業績は顕著でありながら自らがこの分野における先駆的かつ重要な研究者の一人であるだけに、その人の「私の履歴書」が一般の読者にとっても面白いのは当然かもしれない。
（16年3月発行）