つまをめとらば 青山文平 文芸春秋
史上二番目の高齢だという67歳で昨年直木賞を受賞した著者の受賞作が本作である。
長く経済誌記者をつとめ40代で作家に転向、純文学を目指したが年金も払えない状況となり、時代小説に転向してからわずか5年目の受賞という変わり種である。
表題作を含む6篇の短編が収められているが、主人公たちは武家の男たちであるが、その男たちを見る女たちの物語も背景に上手く描かれていて、
ストーリーもあの藤沢周平の描いた江戸時代の市井の人々の哀切感を漂わせるもの、人の世の無常を漂わせるものといずれも中々読ませる。
文化文政の江戸、といういわゆる江戸時代が熟成しきっていた時代の雰囲気やその時代の背景などが、よく描き込まれていて、老若男女のある面では哀愁漂い、ある面ではユーモアのある何か現代に通じる庶民像が描かれている。
新しい時代小説の書き手として期待したい作家だ。
（15年7月発行）