十五歳の課外授業 白川三兎 集英社
1960年代、冨島健夫が中学生辺りの年齢層の少年少女向けの小説をそういった年代の子供たち向けの雑誌などに連載していて大人気を博していて、ひょんなきっかけで一、二作読んだことがあるが、自分がその年代にはなかったような中学生ぐらいの少年、少女を主人公にした作品で「ジュニア小説」などと呼ばれる一大ジャンルができていたのに驚いた記憶がある。
中学生同士の恋愛、あるいはスポーツといった題材が扱われているのだがその中に性の問題が微妙な形で描かれていてそれが当時の中学生たちに人気だったのには、「自分の時代にはなかったことなのに――」とちょっとうらやましい気もしたものだった。
冨島健夫が亡くなって以来というかそれ以前にこういうジャンルからはすっかり離れていたので、本書を読んで「まだ、このジュニア小説といわれるジャンルは健在だったのか」と思った。
まさに、15歳の男の子を主人公にして、結構さっぱりとした感じで性の問題というか男女の問題にも振れ、大人の世界の話も忌憚なく中学生目線で描くというこの作家、一体幾つぐらいでどういう人物なのかと思った。（冨島健夫がジュニア小説を書いていたころは結構いい歳のオッサンだったように思う）
主人公は、歯医者の跡取り息子である中学3年生の卓郎。きわめて平凡な男の子だが、なぜか学校一モテる美女ユーカに告白され付き合っているのだが、独占欲が強く我儘なユーカの卓朗への要求は激しくて卓郎はその要求にこたえるべく汲々としている。そんな卓朗の学校に、陰気で冴えない女子大生の教育実習生がやってくるのだが、卓郎は彼女に見覚えがあった―――。
中学生の主人公を通して友情、恋愛、性、そして大人の世界と中学生の接点といった問題が、主人公の大人への成長物語として展開する―――何で、この小説を手にとったのかとも思うが、なんだか青春小説といわれるジャンルの変遷を思いださせてくれる中々の拾い物の1冊のように思えた。
（16年4月発行）