タイム・イン・パワーズ・オブ・テン H・トホーフト 講談社
極大とか極小の世界というものは実感するどころか、頭で理解しようとしても全く理解できないところもあるが、「長さ」については、この世界における極大がビッグバン以来膨張を続ける宇宙の大きさでありその差し渡しは約500億光年である、とか極小はプランク長さ（プランク時間の間に光が進む距離1.616×10のマイナス35乗メートル）であるとか言われると、それでも「長さには（知り得る限りの）限界がある」とちょっと安心感（？）がもてるけれど、時間となると両サイドに果てがないということに物凄い不安を感じてしまう。
極小の時間は理論的にはプランク時間（10のマイナス44乗秒）ではあるが、このマイナス44乗という途轍もない短さは、長さの場合のようなイメージ可能な「光速」という基準がないだけに果てしなく不安になる。
極大の世界の時間にしても、ビッグバンから今日までの時間が秒数に直せば4.354ｘ10の17乗秒とわずか16桁に過ぎないのに、太陽質量の100億倍のブラックホールまで消失する「宇宙の暗黒時代（ビッグバンから10の100乗秒後）」までの時間を考えた時、その余りの遠大さに頭がパンクしてしまいそうになる。
本書は、量子論でノーベル賞を受賞したトホーフトが1秒という単位を元にして極大の世界、極小の世界の果てまでを乗数毎にイメージしやすいように解説したユニークな一冊だが、そこに挙げられる様々な事象や、原子の崩壊時間といったものと、その図版が実に見易くて面白い。
特に、一番知りたいと常に思ってきた時間軸の極大と極小の世界についての記述は、時々は本書を引っ張り出して再読を重ねて飽きないだろうと思う。
（15年9月発行）