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いま世界の哲学者が考えていること 岡本祐一朗 ダイヤモンド社
いま「科学」と呼ばれる学問分野は、長く「自然哲学」と呼ばれていた。
星の運行をはじめとする自然の営みや、その成り立ちを体系的、理論的に解明しようという学問こそが、自然哲学であるが、自然にも何か根源的な形而上学的な解があるはずだ―――という考え方であり、いまは「科学」と呼ばれるようになったこの学問の基本的な考え方と何らことなってはいない。
すなわち、今も「哲学」とは、すべての事象の成り立ちや、仕組みの底にある根源的な解を求める学問だということも言える訳であり、すなわちそれはいまも「哲学者」たちが探求すべき問題なのではないかというのが本書の著者の主張であり、その意味では、本来の「哲学者」たちは現代においては、こういった問題を探求すべきなのだというのである。
一時期、哲学といえば「xxの哲学における○○について――」といった極めて蛸壺的な者が主流だったが今や、哲学は政治、経済、社会学、環境といったありとあらゆる分野に関して研究する、いってみれば「よろず屋」的なものになっているというのだ。
そういった観点から本書ではまさによろず屋カタログ的に「いま世界の哲学者が考えていること」のメニューが並べられ、そのエッセンスが紹介されており著者の言う意味での「現代の哲学」の様子はよくわかるが、哲学者としての著者がそれらの問題についてどう考えているのか―――といった部分は極めてあっさりとしており何となく消化不良感が残ることは否めない。
特に、第5章で「人類と宗教」についての現状の考察が、グールド対ドーキンス、無神論者ドーキンスの宗教批判についての考察などが紹介されており興味深いものの、紹介だけで終わっている感が強く不満は残った。
（16年9月発行）