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作家の誕生 猪瀬直樹 朝日新書
著者の肩書は「作家」となっているようだが、その著作などからみると、厳密に言えば「ノンフィクション作家」にカテゴライズできるのではないだろうか。
道路公団改革などでの既得権益への切り込みは鋭かったし、口だけではなくみずから改革委員会に乗り込んでその改革立法成立に尽力するなどの行動力などからして都知事になった時には期待ができるかと思ったが、やはり所詮は素人のノンフィクションライターの悲しさ、徳洲会問題などでの「大コケ」のみっともなさは彼に続いたセコイ舛添知事のみっともなさと双璧を成してしまった。
まあ、そんな著者だけに本来の週刊誌記者的なノンフィクションライターとしての再起を図るのがもっともふさわしいとは思うが―――（小池知事応援団というよりは宿敵、都議会のドン追い落としの為に、ちょくちょくテレビ出演をしてはいるようでかつての目立ちたがりな性格は中々治らないようではあるが）
そんな著者のゴシップ記者的な観点からの日本文学というか、日本の小説家のゴシップ的エピソード記事をまとめた本書は、この種の作品こそ本来の著者のフィールドなのかなぁ〜と思わせるものだ。
花袋をはじめ藤村や康成などの作家とその作品誕生のエピソード、あるいは著者らしい挑戦的な文芸評（例えば漱石の「こころ」の矛盾点をパロディー的にあげつらうといった）、あるいは太宰が芥川に憧れていてその容姿や行動すら真似しよとしていた―――といったゴシップ的なエピソードがその真偽のほどは別にして面白いのは事実である。
（07年6月発行）