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量子物理学の発見 レオン・レーダーマン 文芸春秋
物質の最小単位を突き詰めていくと量子という単位に行きつくが、この量子のふるまいが一般相対性理論に基づく物理学の法則と相性が悪い―――というあのなんとも気持ち悪い、居心地の悪さは、かのアインシュタインも「神はサイコロを振らない」という言葉で表されるように中々受け入れられなかった代物である。
しかし、受け入れざるを得なかったのは、実際にこの極小の世界では「標準理論」という量子力学の法則が厳然と成り立っており、現実にその理論に基づいて、この世界が成り立っているという事実を突きつけられているからだ―――。
それにしても、無から有が生まれる―――というかのごとき量子の世界は、中々受け入れ難く、その理論はうさん臭く思えてしょうがない―――というタカさんのような者にとっては、フェルミ研究所の所長を務め、量子物理学でノーベル賞を受賞した著者による解説は、かなり分かり易いものになっている。
1912年にニールス・ボーア「なぜ、電子は原子核に墜落しないのか?」と考えた瞬間に量子物理学が誕生した―――という物語からはじまり、「対称性の破れ」の発見によって量子の世界という異次元物理が認識された経緯、E=mc²というアインシュタインの公式にもかかわらずなぜ光(光子)に質量がないのか―――という疑問が生じること等々、量子論の核心部に入っていく。
そして本書のハイライトは。2012年に発表された「ヒッグス粒子」の発見に到り、質量がどのようにして生まれるのかを解説してくれる。
この丁寧なプロセスによって量子論と質量の誕生についてかなり分かったような気分にもなれるが、最後に著者がいう「では、なぜ、どうしてヒッグス粒子が質量を生み出すのか？についてはまだ分かっていない」という言葉に、量子論についての自分の理解は又元に戻ってしまったような気がしてしまったが。
（16年9月発行）