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テレビじゃ言えない ビートたけし 小学館
「生活保護なめんなよ！」と書いたステッカーだかジャンパーを着た小田原市の生活保護担当職員が「人権意識がゼロだ！」と大変な批判の嵐にとりかこまれ市長が謝罪に追い込まれる、2007年に生活保護を不正受給で打ち切られた男が市役所に乗り込み保護担当の職員3名に刃物で切り付けた、という事件があり、国民の税金が原資となっている生活保護費の不正受給をなくそうと努力している職員が傷つけられたという事実に委縮せず、これからも不正受給には果敢に立ち向かう！という意味で、これらのステッカーを作ったものだ―――という事情も見えてきただけに、少なくとも「不正受給を許さない！」という職員の意気込みは、むしろ褒めてしかるべきところもあった訳だが――――。
もちろん、多くの生活保護受給者は弱者であり、こういった大半の弱者に見える形での「なめんなよ」は、威圧的（上から目線）であり人権を無視したものであってケシカランという非難は当然ではあるが、世の中全体が生活保護費支給日にはその金をもってパチンコ屋に飛び込み、大半を使ってしまう「弱者」が（ほんの一部であるにせよ）本当に、「人権を傷つけられた可哀想な人達」に相当し、こういった一部の生活保護受給者の実態を記事にする「週刊新潮」が、「弱者」をバッシングしている！とんでもない週刊誌といえるのかどうかとなると首をひねるところがないではない。
毒舌といわれるこういった一般的には公の場では言えないような、批判、批評をある程度言えるテレビ出演者は、本書の著者ビートたけし他、極めて限られた人数しかいない。
たけしや毒蝮三太夫の「ジジイ、ババア」はなぜか彼等にはゆるされても、その他のテレビ出演者がいえば、即番組をおろされるだろうに―――。
そんなたけしでも、テレビでいったら大問題になるだろうとして自主規制している意見が山ほどあるという。そんなテレビでは言えない「毒」を思い切り吐いたのが本書であり、その中にはあの酒鬼薔薇聖斗が「元少年A」という匿名で出版した「挽歌」について、もう34にもなって匿名で自分の殺人をネタに本を出す――という行為が少年法というおかしな法律によって守られるのはオカシイ！といったまっとうな意見など、「なぜこれがテレビではいえないのか！」となると、実は世の中が総検閲のがんじがらめになっているという事実に突き当たるからなおさら可笑しい。
トランプがイスラムや中東諸国からの移民を嫌っていることを隠さず大統領令で出したら世界的なバッシングとなったが、アメリカ国内の世論調査ではトランプのこの措置に対する賛成が反対を上回ったというのも、本書でたけしが述べているような「毒舌」が、実は多くの人も言いたくともいえないでいることに多くの読者が共感することと似ているような気がする。
（17年2月発行）