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プーチンの国家戦略 小泉悠 東京堂
ソビエト連邦崩壊前後の日本のロシア情勢分析は世界のトップを行くほど優れたものだったといわれるが、近年はどうなのだろうか―――。
北方領土問題という人質を取られており、これを力づくで取り戻すなどということができない日本にとっては、常にロシアに対して援助だとか開発といったエサをもって下手に出るしかない――といった弱味があるだけに、それをいいことに幾度となくロシアに騙されて「いいとこどり」ばかりされているような気がしてならず、対ロシアの人的関係に於いてもあるいは情報収集活動にしても以前に比べて随分落ちているような気がしてならないのだが―――。
本書を読んで、すくなくともまだ著者のようなナマのロシア情勢に詳しく、緻密な分析ができる専門家がいてくれたのだと、ちょっと安心感を持った。
例えば、ウクライナ侵攻に到るロシア側のやむに已まれぬ事情だとか、それ以降の西欧からの制裁に対する、じつに「ロシア人的な」我慢強さ、といった問題が、何故プーチン率いるロシアだからこそ、見せられるのか―――といった問題も含めて、目から鱗的に解説されていく。
ロシアの対NATO政策、ウクライナ問題、をはじめ、宗教、KGBコネクション、宇宙産業といった問題に対する著者の説は、ロシアを専門とする論客が少なくなっている現代においては、非常にフレッシュに感じられる。
（16年10月発行）