タカさんの読書日記索引に戻る
こんな朝日に誰がした？ 長谷川熙・永栄潔 ワック
かつては「社会の木鐸」などといわれたいわゆる大新聞だが、ネットがこれだけ発達してきて個人の発信による多種多様の言論が氾濫する今となっては、大新聞がいくら「木鐸」らしく上から目線でああだこうだ、と発言してみても鼻からバカにされるような時代になってしまった。
朝日に限ったことではないが、戦時中は戦意高揚のラッパを吹き続け、敗戦後は一転して占領軍の走狗となって「平和の木鐸」であるかのような振舞に終始した朝日新聞に対する評価は「木鐸」どころか「節操のない三文紙」といったレベルにまで落ちてきている。
そんな、朝日に対する信用の失墜が決定的になったことは、従軍慰安婦の虚偽報道を三十数年続けてきたのみならず、訂正記事を出して以降も相変わらずの偏った姿勢を省みることなく、いやむしろ居直り続けているところにあるのではないだろうか。
なぜ、そこまで朝日はその信用を失ってしまったのか―――本書は元朝日新聞記者である著者二人による反省と、朝日新聞のこういった体質が一体どこからきているのかといった分析だが、その多くがストンと腑に落ちるものだ。
それによれば、戦後の朝日のいわゆる「疑似革新的」な言論の基盤は、占領軍（GHQ）に対する絶対的な盲従によるものに過ぎないし、それ以降の例えば、文化大革命礼賛報道、天安門事件を殊更にネグレクトした報道、あるいは拉致事件が話題になる度に「拉致などあり得ない」否定し続けた―――といった報道姿勢も、妄信的に社会主義勢力こそ正義といった妄想報道がもとになっているという。
社の幹部になるためにはそういう妄想を持つ幹部に迎合した記事を書くことが必要とされ、自ら進んで「事実報道」をかなぐり捨てて妄想虚偽記事を書き続けてきた朝日記者たちの体質にまで鋭く切り込んでいる。
「妄想報道」の姿勢は、あの慰安婦報道の訂正以降も全く変わっていないという。
あの慰安婦報道によって貶めてしまった日本の評判を少しでも回復する為にも、朝日は世界各国語で訂正とお詫びを出すべきではないだろうか。それこそが「社会の木鐸」に戻るための第一歩なのだが―――。
さもなくば、やはり一刻も早く廃刊した方がよいのかもしれない。
（16年12月発行）