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満員電車がなくなる日 阿部等 戎光祥出版
エレベータなら「定員」（総重量）が規定されていて、定員以上の人が乗ればブザーがなるなどして作動しないといった安全措置が取られるが、通勤電車の場合にはよく見ると座席数プラスつり革の数ぐらいの総数が「定員」とされているにも関わらず通勤時間帯などでは明らかにそれをオーバーしていることがあるにもかかわらず鉄道会社が「安全基準違反」で責任を問われた――といった話は聞いたことがないが、そもそも「満員電車」の基準はどうなっているのだろうか―――。
もっとも、今から30年前、40年前の「押屋」がいた時代の通勤地獄を経験した身には、最近の電車の混み具合は、確かに「満員電車」かもしれないが、我慢できないほどのものでもないような気がしないではないのだが―――。
そんな訳で、交通コンサルタントであるという著者の「満員電車」をゼロにしよう！という意気込みそのものが、それほどには共感するものではなく、まして、本書にのべられている「総二階化」とか「３線化」のアイデアも、それほどのコストをかけてまで推進する意義があるのだろうか？と疑問を感じないではない。
本書の中で述べられている他の方法の中では、後続車との間隔をコンピューターなどをより効率的に活用して詰める――、といった方策の方がまだ実用的であるような気がしないではないのだが―――。
JR各社の場合、今、喫緊の課題は、赤字路線の廃止とか、廃止鉄道に変わる交通網をどう考えるか――の問題ではないかと思うだけに、満員電車解消という話は、夢物語に終わりそうな気がしないではない。
（16年11月発行）