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珍奇な昆虫 山口進 光文社
昆虫の擬態、たとえばランの花にそっくりの色形をしたハナカマキリという昆虫がいてランの花と間違えて寄って来た虫を捕食している例など、どうしてあんな小さな昆虫が花そっくりな色形にまで自らを変えることができたのだろうと不思議でしょうがない。
いや、あれは長い時間をかけた自然淘汰の結果、花に似た形のカマキリがより多く残り、その中でも更に花に似たものが生き残り―――といった自然選択が働いた結果なのであって、何の不思議もない―――とダ―ウィニストたちはいうのだけれど―――でもやはり、いかに何千万年、何億年という年下をかけようとも、それでもなお、あそこまで花そっくりに自らを変化させるなどという、まさに神業としか思えないことを、あんなに小さな虫が成し遂げた等とはとても信じられない！というのが正直な気持ちだ。
小学生に人気の学習ノート「ジャポニカ学習帳」は表紙写真に美しい花や昆虫のカラー写真が使われているがこの昆虫の写真を40年以上に亘って一人で取り続けているのが本書の著者山口進氏だが、そんな昆虫写真が多数納められた本書を眺めているとあらためてハナカマキリをはじめとする昆虫たちの擬態や、生き残るための戦略としての自己固体改造？（進化？）の不思議さに魅了される。
タイトルに「珍奇な」とある通り、ハナカマキリや、タケノコを主食とするカブトムシ、「音」でコミュニケーションをしているアリ……といったなんとも奇妙で不思議な昆虫たちの姿にしばし浮世を忘れさせる壮大なロマンと悠久の時の流れを感じる。
（17年2月発行）