タカさんの読書日記索引に戻る
ブレイクアウトネーションズ ルチル・シャルマ 早川書房
本書は文庫本であるが、単行本として初版が発行されたのは2013年というから何と今から4年以上前ということになる。
株式投資の月刊誌などで「今年上昇が見込める推奨50社！」などといった特集記事がよくでるけれど、その類の記事を4年後、5年後に見てみると中には既に市場から消えてしまった企業があったり、当時の株価から大幅に下がっている企業が大半を占めるなどすることはよく見るところで、「株の予想なんて、競馬予想と大差ない」と痛感するのが常だが、
本書も、2013年時点では、モーガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントの新興国およびグローバルマクロ分析担当ディレクターであった著者が、過去15年以上にわたって新興諸国をくまなく歩いて得た知識をもとに、当時、もっとも有望な投資先と思えた新興国（ブレイクアウトネーションズ）を挙げたまさに国際版｛いまもっとも値上がりが期待できる新興国株｝を列挙したようなものだ。
その国のポテンシャリティーを机上の計算だけで分析をするのではなく著者自らが現地に赴いて分析し判断していくという「現場第一主義」に基づくものだけに、日本人好みの信頼性を感じないではないけれど、初版からわずか5年程で経済状況はかなり変わってしまっており、成績としては冒頭に述べた株式指南本同様に、「当たるも八卦当たらぬも八卦」的な部分が相当多かったように思う。
中でも、本書に取り上げられているブラジルの凋落ぶりとか、資源輸出依存が裏目に出ているロシア、政治の脆弱さと財閥体質の弊害がもろに出た韓国などが当時、強く推奨されていたことなどを取り上げるだけで、「結局、本書の予測はほとんど外れてしまっている――」という印象を受ける。
更には、「十億人の巨大市場」として期待度の高いアフリカ市場の相も変らぬ低迷ぶりや、同じく持ち上げられているイスラム圏の様々な混乱、といった問題は、現地主義をとったからこそ間違えたのではないか？とさえ思えてしまう。
（15年4月発行）