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バブル 永野健二 新潮社
今考えてみるとあのバブル時代の狂乱の最中にいてほんの一握りの人（往々にして完全な部外者）以外で、「こんなバカげたことが長続きする訳はない」と考える者がいなかったということがなんとも不思議に思えてならないが、あれだけバカげた戦争が散々な敗戦に終わって数十年たってからやっと皆が「考えてみれば、自分たちみんなが間違っていた」と気付いたのと同じで、要するにに振り返ってみればどんな過去にも「反省」はつきものだと言うことなのだろう。
バブルで踊ったわけではないけれどあのバブル時代に会社生活を送っていた我が身も言ってみれば「バブルの真っただ中を生きた」一人であり、あのバブル時代を経済記者の一人として見てきた著者による本書を読むと、あたかも古い卒業アルバムを見るかのように「ああ、こんなこともあったなぁ〜」「こいつも懐かしい奴だが、今頃はどうしているのだろうか？」といった妙な連帯意識さえ生まれてくる。
それにしても今思えば、日本中が未熟だったし、バカだったと思えるけれど、あの頃はみんながそれをくそ真面目にやっていたのだから―――。
日本の指導層も、日本の金融の総本山でもある日銀や大蔵省も、迫られる経済構造改革には取り組まず、低金利政策と為替や企業経営に対する政府介入によってどうにか乗り切ろうと画策し、民間の企業や銀行は、本業そっちのけで「財テク」という名の帳簿操作による収益拡大に走った。
そういったまさに後にバブルといわれた幻の収益こそが本物であり、額に汗することがバカバカしいとまで人々が公言するようになった時―――本当に「こんなことが長続きする訳がない」と気付いた人は皆無だった―――というのだから―――。
本書に登場するバブル事件とバブル人物列伝、たとえば、リクルート、秀和、イトマン、ダイエー、三菱商事、三井物産、野村、山一、興銀、長銀や、ミネベアの高橋高見、秀和の小林茂、ピケンズや小谷光浩、尾上縫、阪和興業の北茂等々、これらも皆今思えば三文役者以下の連中だが、当時は日本経済新聞社の記者であった著者がその一挙手一投足を追いかけ、時には一面を賑わせたことを思い出すと―――なんとも懐かしさが蘇ってくるのが不思議だ。
（16年11月発行）