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「決め方」の経済学 坂井豊貴 ダイヤモンド社
民主主義的な決め方としてベストと思われている「多数決」だが、果たして本当にベストなのか―――。
例えば5つの政策課題があり、各人がそれぞれの政策課題についての可否の意見をもっているにも関わらずA候補は5つの政策すべてに「賛成」、B候補はすべてについて「反対」を表明していてこの二人しか立候補していない場合――――。
A候補の当選によっても、B候補の当選によっても、「自分の意思が投票に反映された――」と感じる選挙民は極めて少数に限られるだろうが、それが「もっとも民主的」と言えるのだろうか―――。
そもそも、最近のように投票率が極めて低く住民の半分以下しか投票にいかないような選挙で「民主主義的に選ばれた議員」だからといって、（例えば鶴田真由子議員の言動について、埼玉4区の選挙民はこの暴言議員を選んだ責任をどう考えるのか！―――とか、埼玉4区は民度が低い！と）皆に責められてもこまるだろう。（というのも、埼玉4区のほんの一部の住民しか「鶴田真由子」という名前を書いてはいないだろうから）
本書を読んでいると今の世の中で「民主的だから」という理由で多数決が採られているものの、だからといってその結果が「もっとも多数の者たちの意思である」と言い切れないケースが山ほどあること、あるいは多数決だからといってそういう「決め方をしてはいけないケース（例えば、マンションのエレベーター補修費用を一階の住人に全額負担させるという案が多数決にかけられる―――といった）も多数あることが単純なシミュレーションなどで語られる。
では単純多数決ではなく別のより良い方法があるのか―――となるとこれまた様々な方法が挙げられシミュレートされているが、それぞれに長所と短所があることが明かされて行く―――。
それでは、果たして民主的にベストな「決め方」はあるのか？ 著者はあとがきで「ある」と言ってはいるがそれが果たしてどのような方法であるのかはあいまいだ。
すくなくとも今の世論調査の方法を変えて「二者択一」方式から離れることが、選挙にも影響を与えるだろう―――と突然、夢のような話になってしまうところに、経済学者らしい現実味のない理論が顔をのぞかせるように思えてならない。
（16年7月発行）