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生命とは何か E・シュレディンガー 岩波新書
「生命とは何か」、今もその解答が得られていない問題に、生命科学者ではなく、畑違いと思われる量子力学の泰斗である著者が挑んだ本ということで、今から50年程前に手にとった本書をあらためて再読してみた。
そもそも、それまでの物理学の常識を根本から覆してしまうような量子力学の発想、「とびとびの値」だとか「量子揺らぎ」という発想に、全くついていけなかった50年前の自分にとって、これまた「熱力学の法則」として信じこんでいた「エントロピー増大の法則」に対して、それを否定するかのような「マイナスのエントロピー」（エントロピーが増大せず、むしろ秩序化に向かう？）という概念は、全く理解しがたいものだったし、今も、その理論を受け入れることはしても真底の部分で何か騙されていそうな気がする。
今回、あらためて読んでみて、この半世紀ほどの間に自分の思考も随分と、量子論的、あるいはマイナスエントロピー寄りになっているなぁ〜と感じたのは、やはり「なぜだか分からないけれど」、量子論の理論は、極小、極大の世界、あるいは多次元世界において成り立っている！という事実、「生命体はそれ自身を維持するために常に秩序化」の方向で動いている！というまぎれもない事実に、いやというほど遭遇しているからだろう。
シュレジンジャーは本書で「物質は平衡状態では活動を安定させる」と言っている。このことだけを取り出せば「エントロピー増大の法則」と全く相反することをシュレジンジャーが言っているということにもなってしまうのでは―――と、ニュートン力学やアインシュタインの相対性理論信者の自分としては、果てしないエンドレスループにはまり込んでしまい、50年前と余り変わってはいないような気がしないではないのだが――――。
（51年8月発行）