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すごい進化 鈴木紀之 中央公論新社
発表された当初からダーウィンの進化論に対しては様々な反論というよりは、反発に近いものがあったことは良く知られている。
もちろん、未だ持ってそれぞれの天地創造物語を持つ宗教においては、自然選択による進化、という考え方が絶対神による生命の創造、という教義の根本に反するとして猛烈な反発を続けているけれど、さすがに最近は狂信的な連中を除けばそういった反発は随分と影を潜めているように見える。
それだけに、進化論に対する反論（というか実質は反発）は、今や、インテリジェントデザイン説のように、巧妙に科学のマントを被った似非理論化してきているが―――こういった動きは、進化論の側に置いてもその理論の絶対性が証明できない以上、この先も何百年も続くかもしれない。要するに、結論のない永遠の論争ということになる可能性は高い。
いわゆる「進化論に対してケチをつける」理論（？）というやつも、宗教勢力以上ににぎやかだ。そんな中の代表的な例は、「全てを、自然淘汰に帰するには、余りに不合理な例が多いではないか！」というものだ。
例えば、スズメバチにうまく擬態しきれないアブ、他種のメスに求愛してしまうテントウムシのオスといった一見、進化の失敗作に見える生き物たちの例を挙げればきりがない程の（我々人間からみた）「不合理な進化」があることから、「進化論」は、非常に欠陥の多い理論だ―――というものだが―――。
本書の面白いところは、そういった進化論に対する「ケチ｝の数々に、徹底的に進化論擁護の立場に立って反論を試みているところだ。
しかも、著者は自分のこの理論が、余りにもダーウィン崇拝といういわば狂信的なものではないかという批判が起こるであろうことを十分想定してそれを楽しんでいるところがある。
著者に言わせれば、一見不合理に思える進化の例も、こう考えれば、実は極めて巧みで合理的な進化の理論に基づいている―――というものであり、本書に挙げられたそれぞれの例は、それなりに納得のいくものばかりだ。
学究的な一冊ではあるが、内容は冗談好きの生物学者による気楽なエッセーといった趣があり楽しめる一冊だ。
（17年5月発行）