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プーチンの国家戦略 小泉悠 東京堂出版
国力を何ではかるべきかによって「大国」の順位は大分変ってくるが、経済力の分かり易い指標としてのGDPランキングで行けばロシアは世界第12位であり、11位の韓国の後塵を拝しているし、人口にしても1億43百万と3億人を超える人口を持つ米国の半分にも満たない状況だ。
世界一といえるのは唯一国土面積だけであることを考えれば、冷戦終結後の今も尚、ロシアがかつての東側陣営の盟主であった時代の名残なのか「強国」の一つに数えられている理由が今一つわからない。
そうなると、アメリカ、そして中国に次ぐロシアの軍事力こそが、今もロシアが大国と見られている一番の理由かとも思うが－－－確かに、軍事的は今もロシアのそれは群を抜いているけれど――戦国時代でもあるまいし、そればかりで大国と言われる訳でもないというのは、軍備に金ばかり使っている三流、四流国を見ればわかる。
ロシアが強国である大きな理由はその指導者であるプーチンに負うところが多いのではないかとも思う。
ロシアの国益と言う観点でみれば、この強い指導者の「ロシア ファースト」のパトスは、今の世界の指導者の中では群を抜いて強いように思う。クリミアを我が物にするために敢えて世界中の反発を喰ってもウクライナ侵攻をやってのけ、機をみるに敏というか、いまここで北朝鮮に恩をうっておけば長い目でみれば、極東アジアにおけるロシアの存在価値が上がるし、中国やアメリカ、日本へ強いロシアを印象付け、ロシアの存在を印象付けることになる---と思えば、躊躇なくその道を歩む－－－。
常に「結果論」で勝ち続けているのがプーチンだということになっているではないか―――。
北方領土を巡ってこのタフなプーチンとの交渉では、日本が果たして何かの利をえることができるとはとても思えないのだが---。
そんなプーチンの分析を読んでおくことは、このしたたかな人物を知る上で参考になる一冊だ。
（16年10月発行）