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クルド人 国なき民族の年代記 福島利之 岩波書店
1916年にオスマントルコを打ち破った英国とフランス、ロシアがオスマントルコの領土に人為的引いた国境線を巡って今も多くの紛争が続いている。
100年前のこの協定「サイクス・ピコ協定」によって民族が分断され常に周辺国の利害に翻弄され続けてきたのが、世界最大の「国を持たない民族」といわれるクルド人である。
現在クルド人は、トルコ、イラク、シリア、イランなどの国々に約3100万人いるといわれ常に独立を狙っているが、それぞれの国において目の敵にされ、その独立の望みは叶えられてはいない。
本書は、新聞記者として中東で取材を重ねてきた著者が、そういったクルド人の歴史と現状をルポしたもので、なぜ彼等がこのような苦難の道を歩まざるを得なかったかが、生々しく語られている。
印象的だったのは、実はこの悲劇が外部的な要因によってばかりではなく、彼等自身の内紛（要するに利権の奪い合い）によって常に独立が頓挫しているという事実だ。
独立の意思に燃えて人々の支持を得て権力を握ったかつての英雄たちが、次々と自分の利益だけを考える政治腐敗の巨魁になっていってしまう繰り返しが、ある意味、他国、そして西欧勢力に付け込まれる最大の原因だということが、生生しく描かれている。
高潔な理想に燃えて政界入りした（？）であろう政治家のほとんどが、その内に大義も何もない、権力にしがみつくばかりの、行きあたりばったりの烏合集散の徒党に成り下がっていく日本の政治情勢と何ら変わることがない。
やっぱり、クルドも人間の醜さと言う点においては、世界のどこの国とも違わないということなのだろうか。
（17年6月発行）