タカさんの読書日記索引に戻る
ヨーコさんの言葉 佐野洋子 講談社
NHKで放送されている（多分、現在は再放送分なのだとは思うが）「ヨーコさんの言葉」という5分番組を偶々見る機会があり佐野洋子という作家を知った。
番組を見た方は多いと思うが、佐野洋子の短いエッセイが、北村祐花のイラストをバックに流れるという極めてシンプルな作りだが、2010年に72歳で世を去ったこの人の、この時代を生きた一女性の人生に対する片意地をはらない極めて自然な見方に何とも言えない共感を覚えて一気にファンになってしまった。
多くの本も出ているようなので急いで買い求め「ヨーコさんの言葉」「わけがわかん」「それが何ぼのことだ」の3冊を読んだが、テレビ番組の印象がそのまま本になっている感じで、短い言葉で人の急所を突く言葉のことをいう「寸鉄」という形容がこの人のエッセイに感心一入だった。
自分にとっては母親というほどではないが、姉的な世代にある女性の目線からの人生観、世界観、人間論に関するエッセイという意味ではこの種のエッセイを読むのは多分はじめての体験だが、世代の離れた母親世代の女性のエッセイ、例えば武田百合子の富士日記をはじめとする等身大感覚のエッセイ以来渇望していたのと同種類の上質なエッセイに出会えたような気がしたし、しかもそれが自分にはいない姉世代だというところに新鮮さを感じた。
絵本作家であるという著者自身によるイラストではなく北村祐花の作品が使われているのは、おそらく佐野洋子が亡くなって以降の出版だからという理由によるのだろうと思うが、最初はちょっと違和感もあったが、NHK番組を見慣れた所為もあるだろうが、彼女のこの種のエッセイにはこのイラストがピッタリしているように思うし、本もテレビエッセイも、このイラストであるためにヒットしているところもあるようにさえ思えた。
手元に置いて時々は手に取ってみたい作品群である。
(17年1月発行)