タカさんの読書日記索引に戻る
理性の起源 網谷祐一 河出ブックス
地球外生命体の存在を疑う科学者は多くはないというか、科学者の多くは未だにそれが確認された訳でもないのに、この宇宙の広さと、何しろ少なくとも一つの星（我々の住む地球）に生命が存在している、という事実から、地球外生命体の存在を確信する人が多いようだが、それでは地球外に知的生命体が存在するか？となると、それを確信する科学者はグッと減ってしまうようだ。
本書がいうのは、我々、人類が生命体であるという事実と同時に知的生物であるという知的であるという二つの条件を満たしていることは、ダーウィン流の進化理論ではどうしても説明がつかないというか何とも相容れない要素が多すぎるというのだ。
というのも、確かに生命は進化が進むと必然的に知的生命体に至る―――というシナリオにはあまりに矛盾が多いようにも思えてくる。
すなわち例えば科学的知識である相対性理論が、進化の為に一体どんな役にたっているのか？とか、理性的であることが合理的な選択をすることには行きつかない―――といった行動経済学の研究結果などを見ると知的であることと、生命維持という目的の両立には矛盾することが多すぎる、というのだ。
本書のタイトルは「理性の起源」であるが、タイトル通りの内容を期待する読者にとっては、認知科学者である著者が語る本書の内容はいささか期待外れというか、肩透かしを食ったように思終えるかもしれないが、その内容は中々面白いテーマを取り上げていると言える。
本書を読んで改めて思わされたのは、人は知性的であろうとするが故にこそ、愚かな選択をしていることが多すぎはしないか、そしてそれらの選択が進化論のいう自然選択や種族保存に全く反することに結びついていないか、ということであり、最初は本のタイトルに「騙された感」をもったものの徐々に興味が湧いてきて面白くなってきた。
例えば、核分裂を利用することで科学兵器を作り、それこそ地球絶滅の瀬戸際にまで至ってしまっているという現実を考えれば、ヒトが理性的、知性的であることは、全く自然選択や種族保存の正反対のなにかとてつもなく愚かな道を歩んでいるようにも思えるのだが－－－これだけの人口を維持していくためのエネルギーだとか食糧をえるためには我々が理性的、知性的であったからこその賜物だともいえる訳で－－－。
いや本当に「理性」とは一体何なのだろうか？
（17年2月発行）