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天と地を測った男 岡崎ひでたか くもん出版
児童向けの偉人伝だが大人向けに劣らぬ偉人伝らしい一冊と言える。
偉人伝といえば、その人物の生い立ち、業績といった必須な内容はもちろん、その人物の立志、努力、そして後に続く人々にとってのお手本となる部分などが描かれている必要があるが、本書ではそれらが、少年少女向けらしく熱く語られており、まさに「偉人伝」らしい一冊になっている。
10年程前、幕張メッセで伊能忠敬が実地測量して作った大図が展示され、これを見にいったことがあったが、一枚が畳一畳ほどの図を216枚使って日本全土を著したものでこれだけのものを実地に測量して描いたという伊能の偉業に度肝を抜かれたものだが、しかもこの全図の測量を思い立ったのは、彼が50歳で隠居を始めてからであり、しかもまず自分より年若い師について測量を学びはじめてからのことだというのには驚き以上のものがあった。
彼はこの図を全て実測して作成、その正確さは現在、衛星で測ったそれとほとんど違わない正確さだというから、そんな偉業を今から200年も前によくできたものだと思う。
児童向け本書を読んで志に燃えるのは少年ばかりではない、第二の人生といわれる定年後に何をなすべきかの目的を見失っている現代サラリーマンにとっても、忠敬の志に燃えて過ごした第二の人生は、大いに刺激になるのではないだろうか。
（03年6月発行）