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よくわかる星空案内 木村直人 誠文堂新光社
子供の頃はよく見ていた星空だが、おとなになってからは余り見た記憶がない。
何と言っても現代そして都会の夜空は光に溢れていて淡い光の星は殆どその洪水に埋もれてしまいよほど条件に恵まれていた場合でさえも全天で数個の星を見つけるのがやっという状態だ。
そんな訳で子供時代に覚えたオリオンを始めとする「冬の大三角」にしても、その星座と星の名前（オリオンのペテルギウス、おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキシオン）は、うろおぼえしてはいるものの、その星々がどの辺りにあるのかさえ今や思いだせない。
とはいうものの幼い日々の郷愁を誘うのが満天の星空の思い出であり、郷愁に誘われてどうしてももう一度星空を見たい、と思った時に一番近道なのがプラネタリウムだ。
プラネタリウムは勿論、あの懐かしい大自然の中で見た星空とは違う、「フェイク」ではあるもののその鮮明さはむしろ60年前に故郷鳥取で見たそれ以上にあざやかだ。
そういう意味では、今星空案内人として最適なのはプラネタリウムで子供達に星々の話をしている案内員かもしれない。
本書の著者は元・後藤プラネタリウム解説員だったというのだから、まさに、星座を知りたい、眺めてみたいという都会の人達にとってのベストな「星空案内人」かもしれない。
豊富な図版、それに分かり易い星座の覚え方、探し方等々、本書をみているだけで幼い日々に観た星空のワンダーを思い出させてくれる。
ところでタカさんにとって忘れられないベストの星空といえば、エジプトのルクソール郊外のナイル河畔に立つ一軒家のコテージのデッキで一杯やりながら眺めた星空だった。全天には夥しい数の星が瞬き、天の川がまさにその名の通り、河のようにながれている光景は、さすがのプラネタリウムをもはるかに凌駕するほどのものであった―――一生忘れることのない光景だ。
（17年9月発行）