21世紀の国富論 原丈人 平凡社
経済論、経済学の目的は何か？という根本的な疑問に立ち返ってみる――等という経済論にはとんとお目にかかれない。
アダム・スミスやマルクス、ケインズの経済論にしても経済の仕組みを解明しようと言う名著ではあるものの、経済学の究極の目的は何であるべきか―――などという書生っぽいというか青臭い議論は（著者たちの議論は例え原著者の目的がそこにあったとしても）、忘れ去られているといってよい。
そして今、経済あるいは経営を語る書籍といえば、単純に言えば結局のところ「金儲けの為のハウツー本」であり、ダイエットの為のハウツー本同様に、どれもこれもどんぐりの背比べであり暇つぶしの読書になってしまいがちだ。
そういう経済学本の問題点を鋭く指摘している本書だが、それでは本当に「経済論、経済学の目的は何か？」を語ってくれているのか――となると―――やはり、現状の経済論の置かれた問題点の指摘という問題提起は良しとするものの、まだまだ最終目標は遠い―――と思わざるを得ないのは、掲げた目標が余りに大きすぎているからだろうか。
本書の中でも、経済というものが、実はその根本においてモラルだとか理想といったこれまた茫洋としたものと、「人間の欲望」というこれまたつかみどころのない鵺のようなものの間で揺れている以上、果てしなくつかみどころのないものにならざるを得ない、という諦観の上で書かれている以上、こういった方向に結論が至ってしまうのは致し方ないことなのかもしれない。
本書が、言及している従来型の20世紀型の大量の消費経済の分析から得られる経済学はもう役に立たず、これからはハードとソフトが融合した新しい産業経済の社会になる―――という御宣託も、あるいはだからこそ、ここに日本経済のチャンスがある―――という指摘にしても、確かにそうかもしれないと思えるものの、具体論に乏しくアジテーションを聞いているような気がしてしまった。
（07年6月発行）