自治労の正体 森口朗 扶桑社新書
公務員は「公僕」といわれる。そんな美しい言葉が、小学校の教科書には書いてあるが、勿論、公務員が公僕であるなどと、額面通りに受け取っている大人が、一体どれほどいるだろうか。
本筋論でいえば、彼等が公僕という不自由な立場にあり、民間企業や自営に比べれば役得や余禄もない立場であるという「ご苦労賃」の意味から、民間並み以上の報酬を得てもよい―――という論理は成り立つはずなのだが、果たして、そうだろうか？ ヤッカミ半分かもしれないが――公務員は、たいして働かないし、責任もノルマもないし、よほどの悪事を働かない限りクビにもならないし、減給もない―――なぜこんな恵まれた環境下にある公務員が、民間以上に厚遇されるのか―――と思っている人の方がはるかに多いのではないだろうか。
まじめに、社会の為にと職務に燃えている公務員が大半であるとは思うが、公務員名関する悪いイメージばかりが浸透しているのは、ひとえに日本の病理のひとつともいえる「連合」そしてその組織を牛耳る、官公労の中の「自治労」の悪行の数々の所為であると本書は言う。
体制の側から支払われる報酬をむさぼりながら、常に反体制の側にあり、社会生活や様々な国の政策の邪魔をする―――しかも、その目的がことごとく自分達がなるべく働かないで、手厚い給与に浴するためという私利私欲の為なのだ―――少なくとも、そう見えてしまうのはこの組織の致命的欠陥と言えるだろう。
なぜそんな組織が「公僕」とされる組織の中にいるのか―――。
日本社会における暗闇の部分である自治労の問題点を描くことは、日本の言論界においては一種のタブーであるのは、自治労が実は巧妙に日本社会の脆弱な部分、例えば、能力不足の地方政治とか、業界ごとの利権構造といった分野に巧妙に食い込んでおり、無能な首長や保守層にすら食い込んで「ギブアンドテイク」時には「脅しのテクニック」で邪悪な関係を築いているからだと著者はいい、その具体例も詳細に上げている。
庶民の側に立っているはずの組合であるはずなのに、消費税の上げを督促し続けるのは、結局は自分達の給与を消費税でより多く賄おうと自治労が考えているからだ―――という指摘には、びっくりしたものの、確かに頷ける部分もあった。
（17年11月発行）