日銀と政治 鯨岡仁 朝日新聞出版
失われた20年といわれるのは、一体、いつからいつまでのことなのか―――バブルの崩壊からかれこれ30年が経とうとしている今、わからなくなっているところもあるが（失われた30年になるのかも―――）一体何が悪かったのか－－－という犯人捜しは終わることがない。
経済というのは無数の変数の積み重ねであるから、不景気というほどではないにせよ、高で成長の記憶がある世代にとっては、どうも日本経済だけが世界において行かれているという感覚をもってしまう。
これを不可抗力だといってしまうことも出来るが、どうしても犯人を明らかにしたがるのが世の中というもので、その候補の筆頭に何時も挙げられるのが日銀、である。
もっとも、日銀が完全に独立して金融政策を行うべきなのか、ある程度、政治と協調しながら金融政策を行うのがよいのかでさえ常に論争があり正解がでていない中で経済を日銀だけの責任だと言う訳にもいかないし、ではどうすればよかったのかといわれても正解をしっているわけでもないから、責任を云々しても仕方ないのは事実ではあるが。
ジャーナリスト出身である著者のスタンスも、本書は何も犯人捜しではなく、この20年間に於ける日銀と政治の関係の記録である－－－というちょっとタイトルか期待したものとはことなるなんとなく「逃げ」の内容になっており、アベノミクスの評価やら出口政策がどうなるか？などを期待して本書を手にとった読者はちょっとがっかりするかもしれない。
アベノミクスが大々的にぶち上げられてから早くも5年近くたつけれども、当初掲げられた（インフレ率2％等）目標は、全く達成されていないし、国債の日銀買入にしてももはや天文学的金額に達していることを思うと、日銀にせよ政府にせよ経済を自分達の力で動かせるとおもったそもそもアベノミクスの最初の段階から間違っていたのではないか―――という気がしないではないが。
（17年10月発行）