ヤクザになる理由 廣松登 新潮社
暴力団、ヤクザと呼ばれる人達は現在、構成員、準構成員あわせて、全国に4万人ほどいるといわれている。
一昔前にくらべればその人数は半減しているもののこれを壊滅させるのは殆ど不可能に近いというのが現実である。
というのも、あらたにこの世界に加わろうとするものが社会構造的に絶えずいて警察による暴力団壊滅への努力も中々追いつかないというのが実情だからだ。
それでは、暴力団員になる者というのは、どのような家庭環境に育ち、どのような青少年期をおくり、どのような経緯を経てこの世界へ入って来るのか―――。
但し、本書で述べられているのは、一応、フィールドサーベイに基づいている調査ということだが、サンプル数が暴力団経験を持つわずか7人であるというところに著者の論の信頼性がやや薄いように思うが、それでも米国などでのアウトロー研究が随所に述べられており納得いく部分もある。
多くの暴力団員が、暴力団関係者が家族、あるいは周辺の環境にいる中で、親の干渉がほとんどないままに育ち、学校では成績不振などにより学校生活からドロップアウトしてしまい―――という道をたどっていることがこのサーベイから分かっているが－－－ただその調査結果はどちらかといえば予想できるもので、それほど目新しいものではないが－－－。
後半部分では、現在暴力団排除の仕組みにより、暴力団から抜けようとするものが多い現状が語られるが、その暴力団排除の仕組み上、社会復帰が容易ではない現状が語られ暴力団離脱者の「アウトロー」化が進んでしまわざるを得ない状況になっていることが語られている。
この後半部分についてできれば、解決策の提案といったものが欲しいところだが、そこまでは筆者の筆も及んでいない。続編が欲しいところだ。
（16年7月発行）