科学世界のスケール感をつかむ 小谷太郎 ペレ出版
教科書に書かれている太陽の大きさと惑星の大きさ、あるいは太陽からその惑星までの距離は、実際の太陽、惑星の大きさや距離を正確に縮尺したものではないということは知ってはいるけれど、それが教科書と実際の縮尺ではどれほど違っているかを改めて解説されると実に驚くばかりの差異があることを本書によってまじまじと知ることになる。
太陽の大きさを直径1メートルのボールだとすると地球はそこから109メートル離れたところを円軌道で周回するビー玉の大きさになり、木星でも太陽から590メートル離れたところを回るソフトボールに過ぎないというのが実際のスケール感であるから、それを教科書の半頁に描くとなれば、とんでもない誤差になり、それを我々は受け入れてしまっている―――ということになる。
例えば一光年という距離を我々は光（秒速30万キロ）が一年で進む距離だから宇宙の大きさ（135億光年）からくらべれば「すぐ近く」と考えてしまいがちだが、宇宙ロケットだとその距離を行くのには何と2万年もかかる計算になり、時空ワープでもしないかぎり到底人類が行けないどころか、探査機さえ送ることのできない距離である。
このように、極大のみならず極小の世界におけるスケール感がいかに我々の世界のそれと違っているのかを豊富なイラストで体感できる。
極小、極大の世界に比べれば、我々の住む世界とは何だか幻想にすぎないのではないかとさえ思う。
（13年9月発行）