進化の創造力 ヨーゼフ・ライヒホルフ 青土社
聖書の天地創造を今も信奉するトンデモ科学ではないけれど、かといってダーウィンの進化論を絶対視するドーキンス流の「進化論原理主義」といえるほどの論者でもない様々な説が浮かんでは消えていくのは、やはり自然淘汰と遺伝子の突然変異によって生命の仕組みを説明してしまうダーウィンの進化論の説得力が余りにも強烈な所為もあるだろう。
ドーキンスの原理論的主張に対してその論敵として活躍したグールドの説も、要するにドーキンスがいうように生命進化はゆっくりと進むというのに対して、隕石衝突といった一大変事を切っ掛けに比較的、急激に起きてきたのか－－－の時間的な違い、であって根本においてはまあ、同じ理論だ！と言ってしまってよい。
それに対して、著者は進化論の原動力は、「生命体の代謝」にこそあるという、ちょっと変わった説を唱える。
遺伝子だけが進化の原動力ではない、代謝こそが進化に大きく寄与しているのだ！という主張は、例えば食物連鎖のどこかの鎖が「余剰」もしくは「欠乏」をきたせば、食物連鎖そのものに大きな影響を与えそれに伴った進化が起きる－－－という例を挙げて説明されると、それはそれで納得できる部分も多いのだけれども－－－。（例えば恐竜が絶滅したおかげで我々の祖先である小型哺乳類が爆発的進化を遂げた－－－といった）
更には著者は、そのような過剰と欠乏、あるいは平衡と非平衡の繰り返しが生命全体を進化させてきたと主張している。
但し、この手の進化論の亜流というか傍流は、数多くあるけれど皆今のところ、浮かんではいつの間にか下火になって消えていくという運命にあるところを見ると、やはり本流のダーウィン説の中の一つの泡に過ぎないのかなぁ〜と考えてしまう。
(99年9月発行)