こないだ 山田 稔 編集工房ノア
フランス文学者という肩書にはあまりイメージが湧かないが、京都大学で仏文の教授をやっていた人らしい。
もちろん、その世界では知られた人らしいが、その世界になじみがないだけに、その人の私的エッセイとなると取り上げられた題材、あるいは思い出す同人誌仲間、あるいは恩師や友人といった人達にもほとんど馴染がないのだが、著者の飾らない文章によって浮かび上がるその仲間たちの姿が、なんとない共感を生むものであり、読後感はさわやかだ。
著者は1930年生まれというから、本書発行時点で既に88歳だから、このエッセイ集でカバーされる思い出なども、相当昔のものも含まれており、一人の老文学者の回顧録として相当な重みが感じられてズシリとするものがある。
（18年6月発行）