生きて死ぬ力 石上智康 中央公論新社
大学受験の前年の夏は3ヶ月ほど、生まれた村の禅寺に下宿して勉強をしていたが、その間、毎日本堂で行われているお勤めに参加していたこともあって今も般若心経は空で唱えられるが、そんなこともあって禅宗には馴染がある。
禅宗の基本は「自力」だといわれ、座禅にしろ作務にせよ結構厳しいものだが日々の糧を得る必要がある身にとってはそれらに専心することは、ある意味無理があるのだが、そんな時「親鸞」の他力本願のことを聞いて少し興味をもったことがある。
「教行信証」などに書かれた他力の教えは決してそう生易しいものではないが、一方に「自力」があると、「他力」もいいかなぁ〜程度の興味はもったものだった。
本書は、81歳になる浄土真宗本願寺派総長が、その他力の教えをきわめて平易な言葉で語ったもので、小難しい仏教の教えを述べた他書と違って、それこそ気楽に読み飛ばすことができるという意味でも、「すべてを阿弥陀仏におまかせすれば大丈夫！」という言葉を繰り返し述べているてんでも、正直、ほっとする所がある。
「精一杯努力さえすれば、結果はOK」だの「いまのままで全てをお任せすればそれでよい。すべて上手くいく」と真宗の総長に言ってもらえば、それこそホッとする―――という効果は現代の不安の中で生きている人達には、間違いなくあるのではないだろうか。
（18年5月発行）