宇宙に外側はあるのか 松原隆彦 光文社新書
「科学的な思考」といえばニュートン力学的な絶対空間、絶対時間、という考え方だと本能的に考えていたのだが、それがアインシュタインの相対論やら、量子力学によって、宇宙ばかりではなく自分自身の存在までもが、決して絶対的なものではない、と言われてしまうと、では自分が今ここに存在しているという事実（と自分が考えている）ことすら幻であるということだといわれているようなもので、何が何だか訳が分からなくなってきて、それこそ非科学的な宗教論（特に仏教哲学）に踏み込んでしまっているような居心地の悪さを感じてしまうのだが。
宇宙だとか存在という問題をあくまでも科学的に論証しようとなると、そもそも絶対論が成り立たない所でどのように「科学的」であり得るかという自己撞着に陥ってしまうのではないかとも思っているのだが。
多くの、科学書を読んでも中々解決しないこの問題を、あくまでも「科学的」に解説しようというのが本書であり分からなかった部分について随分と理解が進んだようにも思えた。
第１章で宇宙の始まりからその大きさ、更には時間軸というものについて優しく解説、第２章では物質の起源、あるいはエネルギーについて、第3章でが宇宙の大きさについて、又第4章ではダークマターやダークエネルギ-についてそして第5章ではブラックホールの向う側、あるいは多次元宇宙について――と順を追っての解説がなされるから、いままでに感じていた宇宙論の「訳の分からなさ」は大幅に薄められることは間違いない。
それでも尚、訳の分からなさは残るが、それだからこそ宇宙論は止められない！という訳なのだろう。
（12年2月発行）