時間旅行者のための基礎知識 J・リチャード・ゴッド 草思社
タイトルからするとタイムマシンを思い浮かべ気楽に読めるSFチックな本かとおもったが、どうしてどうして、宇宙物理学の最先端の知識をこれでもかこれでもかと詰め込んだ、実に読みごたえのある一冊だった。
一本の矢にも例えられる時間次元は、未来に向かって進むだけで後ろへは進めず、他の次元（縦、横、高さ）とは異質なものだという我々の持つ固定観念は、最近、最先端の物理学では破られつつある。
すなわち、タイムトラベルは、今や荒唐無稽な夢物語ではない！という出発点からはじまって、さて、ではどのような方法でタイムトラベルが可能と考えているかを、様々な著名物理学者たちの研究を紹介し、その実現性などを真剣に論じているのだから、物理学好きにとっては座右の書にしたいぐらいの一冊である。
もちろん、いずれの理論も今のところ理論・仮説に過ぎないのだが、著者をはじめとする多くの物理学者たちの時間スケールは我々のそれとは全く異なっており、100年、1000年いや何万年単位で語っているのだから―――未だ、間違いなく「夢の話」ではあるのだが―――。
（03年8月発行）