「死」とは何か シェリー・ケーガン 文響社
イェール大学で23年間続いているという人気講座、哲学科教授シェリー・ケーガンの「死とはなにか」の講義録抜粋だ。
だれもが避けられない運命である「死」だが、生きている内に死を経験したものはいないし、死を経験して生き返った者もいないだけに、古来、実に無数の人々が死について考察してきたが正解といえるものに未だだれも到達した者はいないし、宗教的な考察による死は単に信じるか、信じないか、の問題になってしまえばいずれも万人の賛同を得られるものではない。
その点、ケーガンは割り切っており自分の死に対する考察はあくまでも論理学的なアプローチによるものであり、それが生きている内に死を経験できない我々にとっては、もっとも合理的な「死とは何か」の考察方法であるという。
死という「不条理」を論理的に解くというのだからゲシュタルト崩壊を起こしそうなアプローチのような気もするが、ケーガンの論理の中に入ってしまうとそれはそれで納得できるのが不思議だ。
ただ、タイトルに惹かれて手に取った本書だが、本質的に「死とはなにか」についてはやっぱりさっぱり分からなかった―――というのが本音である。
それはそうだ「死とはなにか」についての正解などある訳もないのだから。
（18年10月発行）