太平洋 蒲生俊敬 講談社
はっきりと定義されている訳ではないようだが水深200mを超えると深海というらしい。
四方を海で囲まれている日本の領海における深海が占める面積は日本の多さは世界有数だとか。
それだけに日本の深海研究は世界でもトップクラスにあるらしいが、著者もその一人だ。
本書にはトップクラスの研究者らしく著者の「深海愛」が溢れているように感じられ読んでいて楽しくなってくる。
本書で日本が世界有数の深海国とはいうことは良く理解できたが、逆に一般の我々日本人の深海に関する知識がいかに乏しいかを本書を読んでつくづく感じた。
深海ともなれば当然太陽光は届かないから、光合成をおこなう植物プランクトン、海草などといったものがいないこともありすなわち「深海には生物がほとんどいない」ということになる。ほとんど生物がいないはずのところにそれでもいる生物となるとその生態系は極めて特殊なものに限られるから、確かにこういった変わった生物を研究するいうのは研究者冥利に尽きるかもしれないし、それこそが著者を始め深海研究者だけの楽しみの世界――ということになるのだろう。
深海は人類にとってとんでもなく未知の世界である。というのも人類は既に宇宙という未知の世界に500人以上の人間を送っているが、1万メートルを超える超深海の海底というという超弩級の未知の世界に達した人類はまだたった3人しかいないというのだから―――。
同じ地球上にありながらそんな未知の世界が我々の近くにあるなんて驚きだ。
海底の地形の話、熱水噴出孔の話、あるいは人類の捨てたプラスチックゴミが超深海で発見された話等々、海にまつわる話題が実に盛りだくさんの一冊だ。
（18年8月発行）