ささやかな知のろうそく リチャード・ドーキンス 早川書房
ドーキンスといえば、「利己的な遺伝子」をはじめとする数多くの著作においてダーウィンの進化論の急進的な擁護者として知られているが、その進化論擁護の姿勢からくる宗教否定論、例えば「神は妄想である」等の過激な著作などで宗教を敵に回して頑として引かない姿勢などには（もう少し妥協的にふるまったらよさそうなものに――といった）毀誉褒貶の激しい生物学者---というよりは哲学者・思想家として知られている人物だが、そういった行動を伴う過激なところのある言説で世界の知の巨人の一人にも数えられる人物である。
本作はそんなドーキンスの自伝と名打っているが、どちらかというと一般的な自伝の作りにはなっておらず、むしろ今までの彼の人生において起きたこと、回りの人との出会い、思い出、といったものをエッセー風に寄せ集めたもので、読み方によっては「自慢話」的な部分も多いように思うが、なにしろ登場人物達がこれまた世界の「知の巨人」といわれる人物ばかりであるだけにその迫力に圧倒され、自慢話につきもののいやらしさは全然感じない。
頁数は多く読了には数日かかるが最後まで飽きさせない一冊であった。
（17年2月発行）