死刑 読売新聞社会部 中央公論社
昨年オーム真理教事件で死刑判決が確定していた麻原彰晃等の死刑が執行されたが、以前に比べればその執行の模様などが比較的オープンに報じられるようになったのは、死刑という刑罰に対する反対論が全体からみれば小数とはいうものの存在している中、以前のようにいかにも臭い物に蓋をするように、闇から闇に処理してしまい却ってその刑の残虐性を際立たせてしまうのに比べたらよかったのではないかと思う。
本書は今から10年程前に書かれているという意味では、当時は今と比べればまだまだ死刑についての実態が明らかにされておらず死刑を巡る論争も、賛成論、反対論それぞれが手探り状態で「こうなのではないか」という想像を元にやっていたところがあったことを思い出した。
勿論、今でも身内に残酷に殺された愛する人をもつ人達が、強く死刑を望むのに比べて、どちらかというと殺人を他人事ととらえて「人道」を振り回す人たちがいるというお互いの側における共通性の無さは問題になるが、本書は敢えていずれの側にも与することなく、淡々と両方の側の考え方を述べており、又、死刑囚という立場がどのようなものなのか、その明日執行されるかもしれない死刑を何年間も待つ身がどんなものなのかを伝えていて何とも迫真のドキュメントになっていると思う。
（09年10月発行）