噺家が詠んだ昭和川柳 美濃部由紀子編 メイツ出版
昭和5年に発足した噺家たちによる川柳の会「鹿連会」は、数回開かれた物の自然消滅してしまったが、戦後の昭和28年に再開されてからは10年以上続いたという。
メンバーは三遊亭圓生、桂文楽、古今亭志ん生、柳家小さん、桂三木助、橘屋圓蔵、金原亭馬生 といったそうそうたるメンバーであり、本書にはその名人たちが「鹿連会」で詠んだ傑作が紹介されている。
編者は馬生の次女、すなわち志ん生の孫にあたる関係もあってこの資料をもっておられたようだが、さすがに稀代の名人落語家が、遊びでやっている川柳だけあって、何とも洒落ていておかしみのある作品が並んでいるし、昭和28年からの10年間という戦後から立ち直っていく時期の日本のそして落語界の雰囲気が良く出ている。いくつか面白かった句をあげる。
借りのある人が湯ぶねの中にいる 志ん生
湯豆腐はふたりのぐちをきいている 志ん生
洋食のライスホークでくいにくい 小さん
たばこの火つけるトタンにバスがくる 志ん生
パチンコは時間がないとよく入り 馬生
酔ってくる頃から夫婦らしくなり 小勝
柳腰八頭身にはほどとおし 馬生
女房のまえで友だちヒヤリさせ 小さん
（19年2月発行）