四国巡礼日記 垣添忠雄 中公文庫
国立がんセンター総長として活躍された著者が、40年間つれ添った伴侶を亡くし、そのグリーフの中で、四国八十八カ所の巡礼に出た体験を綴った一冊だ。
愛妻を看取ってから、悲しみと喪失感から破滅的な生活を送っていた著者が、徐々に立ち直り、妻の死から7年後に、思い立って四国巡礼の旅に出る。
様々な理由で四国巡礼を目指す人は多いが、そういう人たちにとって本書は、ある種、巡礼手引書的な部分もあり、又、体験記としての役割も大きいとは思うが、なにしろ、愛する人を亡くした老年の男性の心境を描いたエッセーとして中々読ませる。
知人、友人の中に何人か、四国遍路を行った人や、現在進行形で行っている人がいて、ちょっとあこがれなくもないが―――根が怠惰なのか、遍路旅に出てみようとは全く思わないが―――。
（19年2月発行）