不自然な宇宙 須藤靖 講談社
「神は存在するのか」という議論はキリスト教に限らずあらゆる宗教において許されない議論だ。彼等によれば存在することは自明であり、その存在を疑う事は罪だというのだから――神を信じる者と神の存在を議論すること自身を不可能にしてしまえば、彼等（信者）にとって怖いものなしだ。
「従ってこの世界は神が創った」という彼等の論理に、「いや、そうではない」という議論を吹きかけても無駄だ。
例えば、宇宙に果てはあるのか？という疑問一つにしても現代科学は、解明しきれていないし、本書で触れられている「多元宇宙論」のように、我々が棲む宇宙の他に、マルチバースが10500個もあり、その中の一つである我々の宇宙では、偶然にも我々生命が生きられる環境にあったのだ―――等という理論は、それだったらそんな偶然を起こさせる能力は絶対神に決まっている！という教会の理論の方がよほどまともに聞こえてきてしまうのだから―――「神の存在」理論の方が分がいいようにさえおもえてしまう。
著者の言うマルチバース理論は十分説得力もあるけれど――教会の「神」理論との差は要するにどちらを「信じるか」であるような気もするし。
（19年1月発行）