サピエンス全史（上下） ユヴァル・ハラリ 河出書房新社
諸説はあるものの、我々ホモ・サピエンスが誕生してから7万年といわれている。
人類誕生から500万年、生命誕生からの40億年に比べたらほんのわずかな時間でしかないにもかかわらず、ホモ・サピエンスは、これまで地球上に存在した生命の中で、唯一優れた文明を持ち、目覚ましい進化を遂げた生命種であるといえる。
そんなサピエンスの歴史を通史として物語ったのが本書であり、その視点はいささかドラマチックに筋立てられて過ぎているように思わないではないが、生物史、あるいは通史といったどちらかというと退屈になりがちな物を、一応研究書らしい体裁で物語ってくれているところが、世界的なベストセラーとなった所以であろう。
サピエンスが他の既に絶滅した人類に比べてこれだけの繁栄を勝ち得た理由として、その「妄想力」があるとしている点は、人類が優れた言語能力を持つ唯一の生命種として「想像」することが可能になったこと、あるいはお互いが意思疎通することができるようになったことなどで、確かに思い当たるところもあるし著者の説に頷く面もあるが、なによりも、その断定的な口調にこそ一番の説得力を秘めているように思う。
なにしろサピエンスの進化をこういった風に堂々と述べられてしまうと、人々は長年の謎が一気に解明されたかのように納得してしまうところがあるのではないだろうか。
通史であると言いながら、想像を交え、サピエンスのこれからについても、かなり断定を交えて語っており、SF物語を読んでいるような面白さを感じてしまう一冊であることは間違いない。
(16年9月発行)