数学的な宇宙　　　　　マックス・テグマーク　　　　講談社　

「宇宙は数学という言葉で書かれている」とはガリレオの名言だが、本書の著者であり今最先端をいく宇宙物理学者であるテグマークは、その論をよりすすめて宇宙は数学そのものであるという「数学的宇宙仮説」を解いており、本書はその説の解説ともいっていいものだ。

著者によるとこの宇宙は多元構造しかも四層構造の数学的階層からできているという。

まず第一部では、宇宙を大スケールでみた場合、基本的には2段階の並行宇宙となっており、われわれにとって観測可能な宇宙の先には、無限個の宇宙（マルチバース）があるという。マルチバースごとに恐らく物理定数は違うという。これが、レベルⅠの多宇宙である。

さらにこのレベルⅠ宇宙がさらに無限個集まったレベルⅡ多宇宙があり、これらのレベルⅡ宇宙を量子スケールで見た場合さらに上のレベルⅢ多宇宙にいたるというのだ。

なんだか、全く理解できないながら、語り口は柔らかく、数式なども使っていないので何だかわかったような気にもなれる。

そして話は、宇宙論から広がり実在とはなにか、というテーマに入っていくのだが、この多宇宙論を突き詰めたばあい、宇宙の実在とはすなわち数学そのものだというのであるが―――この辺になると、もう全く理解が及ばない。

ただ、最先端の宇宙論に触れているのだという知的興奮だけは十分味わえる一冊だ。

(16年9月発行)