科学する心　　　　池澤夏樹　　　　集英社　

大学では物理学を専攻したという著者には科学に関する随筆なども多いが、同時に小説や詩や文学評論なども多く、ギリシャ現代史、アメリカの小説の翻訳も手掛けるというマルチの才能の持ち主だが、世界各地を旅した経験もあいまって、その碩学振りには驚嘆させられる。　

雑誌に掲載された⒓の科学エッセーを中心に編まれた本書のなかでは、その碩学振りはいかんなく発揮されているが、カバーする分野は、鶏や虫の観察とか、料理、最近読んだ本の内容整理と自由気まま、著者がこれらのエッセーを楽しんで書いているという雰囲気がひしひしとつたわり、読んでいる方も楽しくなってくる。

(19年4月発行)